エッセイNo5

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 ・・・ 牧師エッセイNo5 ・・・

 作家、三浦綾子さんの「藍色の便箋」という本の中に、こんなことが書かれていた。

「私たち夫婦が結婚するとき、牧師からこう言われた。『式を挙げたからといっても、次の日から夫婦になるのではない。一生かかって夫婦になるものだ』と。この言葉は、私たち夫婦に千鈞の重みをもって迫った。結婚したばかりで、理想的な夫であり、妻であることは至難である。『男はその母により育てられ、妻によって人間になる』という言葉を聞いたが、この言葉は、男を女に、妻を夫に置き替えることもできると思う。つまり、男も女も、母親のもとにあるうちは、まだ育てられている状態なのである。完全に育て上げられていたわけではない。人間として熟成するためには、夫の愛、妻の愛が必要なのである」

これは、金言だと思う。「二人の者が一生かかって夫婦になっていく」 もしこれを若き夫婦が一生の祈りの課題にして努力するならば、神さまは必ずその夫婦を助け導き、大いに祝福してくださるにちがいない。

夫婦が共に成長していくために、真実な愛がどうしても必要である。妻が夫の愛を受け、夫が妻の愛を受けながら共に愛によって生き、育てられるのである。

恋愛時代、新婚時代であるならば、相手を愛することなど容易なことであろう。そんなことは努力しなくてもよい。しかし、一年、二年、三年と時が経つにしたがって難しくなってくる。なぜならば、人間の愛ほど熱し易くて、冷め易いものは他にないと思われるからである。

男性、女性の互いの異なる性を求めあうエロースの愛の情熱は、ささいな欠点、弱点がたとい多くあっても、それを乗り越えて幸せ気分をつくり出すものであろう。

そういう感情は、そう何年も続かない。そして、その幸せ気分が冷めた時、互いの欠点と弱点は実によく見えてくる。

有名なシンガーソングライターのさだ・まさしの歌で、「もう一つの恋愛症候群」というのがある。その中で「恋とは必ず消えていくと誰もが言うけれど、二通りの消え方があると思う。ひとつは心枯れてゆくこと。そして、もうひとつは愛というものにかたちを変えること。相手に求め続けてゆくものが恋。奪うのが恋。与え続けてゆくのが愛。変わらない愛。だから、ありったけの思いをあなたに投げ続けられたらそれでいい。あなたに出会えて心からしあわせです」とある。

私は、この歌にとても共感する。多くの人々は、I Like you.を夫婦の愛のように思っているようである。本当は、I Love you. である。人の「好き」というのは感情であり気分である。しかし、「愛する」には、意志が伴うものだ。

よく性格の不一致を夫婦が破局する理由としてあげる場合がある。だが、お互いの違いなどは、最初からわかっているはずである。

男女の違い、両親の違い、性格や気質の違い、教育の違い、出会いによる影響の違い、歩んできた人生の違いがある。結婚生活とは、違うものだらけの人間が大きな決断をして踏み出していく世界なのである。

そこで、お互いの違いを理解し合い、認め合い、受け容れ合うために必要なものは、そのような相手である夫・妻を《愛そうとする意志のエネルギー》である。

その力の源が神にあることを聖書は教えている。神の愛のことをアガペーという。このアガペーは人間の愛とは異なる。

確かに神が賜物としてすでに与えておられる人間の愛は、素晴らしい。男女をひきつけ合うエロースの愛。肉親のストルゲーの愛。友情のフィレオーの愛。それぞれ尊いものであろう。しかし、人間の愛は変わり易い。誰かに傷を残してしまう。時として当てにならない。また口先だけであったりする。

けれども、このアガペーの愛は、本当の愛である。真実を貫く愛。誰もが納得する愛。そして、それは、愛する者のために、「自分の命を与える愛」である。

夫は妻に自分の命を与える。妻は夫に自分の命を与えるのである。そこには、相手に対して愛する理由や条件などはない。言うならば「何々にもかかわらず、わたしはあなたを愛する」という無条件の愛である。

「あなたに欠点があっても、弱いところがあっても、わたしはあなたを愛する。わたしはあなたに自分の命を与える。わたしとあなたは一つだ。神さまがお互いの人生において出会わせてくださって、天国ののりで結び付けてくださったのだから。一生かかって本当の夫婦として成長していくのだ」

実は、この愛に生きようとする夫婦は、相手ではなく自分が成長しようと願うようになる。夫と妻の愛に答えようとするエネルギーを相手から与えられるからだ。

皆さん。生涯かけて夫婦になるために、神さまのアガペーの帯を腰にしめて、祈りつつ歩んでいこうではないか。

いつまでも存続するものは、信仰と希望と愛と、この三つである。このうちで最も大いなるものは愛である」 (第一コリントの手紙1313)