エッセイNo8

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 ・・・ 牧師エッセイNo8 ・・・
 

NO..8

「希望は失望に終わることはない。なぜなら、わたしたちに賜っている聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからである」ローマ5:5

 

 デンマークの文学者(童話作家)、アンデルセンは、クリスチャンだった。彼がこのような言葉を残している。

「主イエス・キリスト。わが信仰、わが慰め、私はあなたの内に、神の御声を聴きます。あなたは全き人であり、気高き方でした。あなたは、『私のもとに来なさい』と言われました。それは救いの道、私は救い主なるあなたに、ひたすらすがりついています。あなたは神の独り子、私はその御言葉を深く知りました。あなたの下さった全てのものに感謝します。あなたの御言葉は神から出て、生命なのです」と。

 

 アンデルセンは、キリストを信じる信仰によって、多くの童話を世に送り出し、世界中の人々の心に素晴らしい心の糧を与えた人物なのである。

 

 1844年のクリスマス・イヴの夜のこと。アンデルセンはただ一人、ホテルの一室に座り、通りをながめて、人々の道行く姿に目をとめていた。彼は、子どもたちが両親と一緒に楽しそうに買い物をする様や、娘たちがいそいそとおしゃれをして通るのを見ながら、天涯孤独の身の上を思うと、何とも言いようのない寂しさに襲われていた。

 いつしか彼は身支度をして寒い外の町を歩いていた。町はクリスマス・イヴのきよらかな雰囲気にここかしこ満ちていた。

 

 やがて、アンデルセンが雪に覆われた東通りの広場に向かおうとした時、街角で可憐な声を聞いた。

「マッチ!マッチ!マッチはいかが」、見れば一人のみすぼらしい少女が大きなカゴに一杯マッチを入れて売っているのではないか。その小さな手は、かわいそうに紫色をしていた。

「おじさん、マッチいらない」、少女は悲しそうな目でじっとアンデルセンを見ながら言った。彼はゆっくり首をふった。

「一つでもいいの。買ってよ、おじさん」、少女はなお悲しそうに言った。アンデルセンは、ポケットに手を入れると、銀貨をつかみ出して少女の手に握らせた。その手はまるで氷のように冷たく凍えていた。

少女は、たくさんのマッチを渡そうとしたが、アンデルセンは一つだけしか受け取らなかった。

 

「いいかい、今夜はおじさんと二人だけで素晴らしいクリスマス・イヴを祝おうよ」。

 

彼はマッチを一本取りすった。ポッと明るく辺りが照らされ、やがて消えてしまった。

「こんな小さな光でも、この世界の片隅で灯されたら、それはだんだんと大きくなっていくんだよ。そら、マッチをすってパッと明るくなった時、わずかに辺りは照らされたじゃないか」、しかし、少女は現実の生活の厳しさにしくしく泣き出してしまった。

 

 アンデルセンは、少女を慰めながら二本のマッチをすった。辺りはパッと明るくなった。「この火が燃えている間にこう考えようよ。人間は希望をもたなければいけないよ。いろいろ辛いことがあるけれど、人間の心の中にはこのように愛の火が灯ることがあるんだよ。誰にも愛の火はあるんだ」

 

 再び火は消えたが、彼は今度は数本のマッチに火をつけた。

「ほら、何という素晴らしいクリスマスツリーだ。おじさんだって君と同じように悲しくなることがたくさんある。おじさんは一人ぼっちだもの。でもね、おじさんは、クリスマスが来るたびに、神さまから素晴らしいプレゼントをたくさんもらうんだよ。それは、神さまの愛だ。神さまは、どんな者でもいつくしんで下さる。そして、人間にこの上ない贈物をして下さったんだ。それは希望だよ。この暗い世界の片隅に、もし一人でも希望を持っていたら、世界は少しずつ良くなってくる。みんなの心にもこの光がうつるからさ」、そして、アンデルセンは、まとめて力一杯マッチをすった。

 

 辺りは真昼のように輝き、少女は涙をふいて微笑んだ。

 

「お嬢ちゃん、君はきっとしあわせになるよ。だって今君は希望を持ったのだもの」

 

少女は、微笑んでアンデルセンを見上げた。

 

クリスマス、それは希望の日である。小さな心に灯る希望の光だ。今年も、コロナ禍、イエス・キリストの救いの命は世界に広がるのである。